みつりんふぁんくらぶ

観たものについてのメモ。解体的です

SSSS.GRIDMAN

2018.秋アニメ

山口に勧められてみた。彼は特撮が好きだから楽しめるのは必然だったんだけど私は傾倒するほどそのジャンルが好きではなかったから最後まで楽しめるか不安だったけどしっかりその分野に明るくない人の興味を引く演出や構成で素晴らしかった。

静かな隠と激しい陽のアンバランスさが見事に世界観を埋めていて、1クールということもあり無駄がない。悪く言えば展開が早い。ただ淡々と物語が進行していくからついていけないわけじゃない。1話ごとの危機の矮小化を是と捉えるか否かで視聴の余裕は変わってくると思う。マイナスに捉えるならばそれはそれこそ日曜の1年単位で入れ替わる特撮やアニメの夏頃を見ている感じの退屈さ。予定調和感。唯一私が我慢しようと思ったのはそこ。でもそこだけ。本当に整ったアニメだった。

▽ここからネタバレ





このアニメは結局アカネの心象風景を描いたもので、世界はアカネの箱庭だった。そういう意味ではセカイ系だし、エヴァのオマージュなんだろなあと思うところも多々あるけど(演出だけでなくね)いまやセカイ系なんざアニメの鉄板になり得るし、いい意味でテンプレートをなぞっていることに私は何の不満も疑問もなかった。内容が重要だしね…ていうかこのテーマとグリッドマンを掛け合わせて作り上げたのすごいと思った…原作見てないけど、子供むけ特撮を現代アニメと練り上げてあんなに視聴者を盛り上げるものを作り出したのすごいぜトリガー、だりふらとはなんだったのか。

どうして裕太がグリッドマンになったのかという説明のつけ方が粋すぎてもう奥歯が痛かった。

でもやっぱり私が目をつけるのはアンチなんだけど。
怪獣として失敗作だったからこそヒーローになれたアンチが最後オッドアイになるんだよね。12話の覚醒っていうタイトルはもう何重にも意味があって、でも一番はアカネのための言葉であってほしいんだけど、その意味の中の1人にアンチもいる。重症意識不明からの帰還とか、アカネの世界のキーマンとしての意味ももちろんあるけど、私はアンチの人間としての覚醒っていう意味を大切にしたい。

これはアカネそのものだと思う。

このアニメの世界がアカネの一晩の夢だったのか、長い妄想だったのか、それはわからないけどアカネは最後に目覚めた。
改心して目覚めたとしても内に秘めた攻撃性やフラストレーションはどうしてもすぐには拭えないものだし、ポジティブな感情のみを抱いて生活するのは到底無理だと思う。

アカネの世界で目覚めたアンチは片目だけ青くなっていて、これはヒーローの色だったよね。片目だけってのがいいんだ。すぐにヒーローにはなれないんだ。むしろ一生なれないかもしれない。この不全さが前を向こうとしたアカネの不安定だけど確実に存在する希望のメタファーとなっててすごくいいなあと思いました。

アカネは受容的な愛情(立花)を厳しくも(もちろんお互いのために)排斥したけどアンチはアカネとずっと一緒にいるんだと思う。アカネの等身大の、感情の何割かをアンチが担っていると思っている。しかもそれは立花みたいに一点集中的なものじゃなくてアカネの深いところにある明るいところも暗いところもひっくるめたものなんじゃないか。そういう意味でアンチはアカネから離れなかったし共生していくんじゃないかと考える。

タイトルのSSSSが1人の女の子のためだけにつけられてたのも感慨深かったね。みんなでポテチとかつまみながらわいわい二週目いきたいです。